膝痛に大きく関与する膝蓋下脂肪体(IFP:Infrapatellar Fat Pad)って何?
はじめに
この記事では、膝痛に大きく関与する膝蓋下脂肪体(IFP:Infrapatellar Fat Pad)について解説していきます。
臨床においては、しゃがみ込み時や階段昇降段時やAKP(Anterior Knee Pain)に大きく関与する組織であると考えてます。
膝蓋下脂肪体とは
『膝蓋下脂肪体』は『前顆間部』と『膝蓋靭帯の深層面』の間に存在する膝前面の脂肪組織である。関節包内にあり、滑液包外に存在する。 (プロメテウスより引用)
これは、正常膝には一定で存在する組織であると言われている。(knee surgery sports traumatology arthroscopyより引用)
また、膝関節の屈伸に伴い形態変化することが特徴である。
・屈曲に伴い後方に移動し、膝蓋骨の後方へ滑り込む
・伸展に伴い前方に移動し、膝蓋骨の尾側へ押し出される。
(整形外科運動療法ナビゲーション:下肢より引用)
疼痛発生のメカニズム
この膝蓋下脂肪体が外傷や繰り返し機会的刺激によって微細な損傷を受け小出血を生じます。その刺激によって組織微細浸潤・結合織性肥大を起こし繊維化するために柔軟性を失うのです。
その為、本来膝関節伸展・屈曲に伴う移動が阻害されることによって脛骨大腿関節(FT関節)間や膝蓋大腿関節(PF関節)間に挟まれることにより疼痛を起こすと言われている。(運動器疾患の『なぜ?』がわかる臨床解剖学より引用)
また、下の図に示すIFPに加わる圧力を調べた研究より屈曲20°以下と屈曲100°以上で高くなるため、最終伸展時や深屈曲時に疼痛が起こりやすい。(knee surgery sports traumatology arthroscopyより引用)
このことから、臨床においてはしゃがみ込み時や階段昇降段時やAKP(Anterior Knee Pain)に大きく関与する組織であると考えてます。
IFPは痛みを感じやすい?
膝蓋下脂肪体は大腿神経・閉鎖神経・坐骨神経など豊富な神経支配を受ける。
また、自由神経終末といった疼痛受容器も豊富に存在するため、膝の中で最も痛みを感じやすい組織なのです。
*下の図で黒色で示されているの部分がIFPで最も疼痛が強い『severe pain』に分類されています。(The Journal of Physicaltherapy Scienceより引用)
臨床所見
・膝関節の屈伸に伴う膝関節前面の痛み
・Hoffaテスト陽性
・Jasonテスト陽性
・エコーによる評価(移動量の低下やドプラー反応の有無、エラストグラフィーで柔軟性の評価)
これらは、触診動画や評価・治療動画で詳しく説明させていただきます。
まとめ
膝蓋下脂肪体は、膝前面に存在し、繊維化や瘢痕化によって柔軟性が低下することで周辺組織を圧迫して疼痛を起こすことが多い。
また、膝蓋下脂肪体自体も疼痛受容器が多く、痛みも感じやすい。
臨床やスポーツ現場で遭遇することも多いため、膝蓋下脂肪体の知識は是非とも知っておいていただきたい。
参考文献
The Journal of Physicaltherapy Science 31,569-572,2019.
knee surgery sports traumatology arthroscopy 13,135-141,2005.
プロメテウス 解剖学アトラス (医学書院)
整形外科運動療法ナビゲーション (Medical View)
運動器疾患の『なぜ?』がわかる臨床解剖学 (医学書院)
記事担当:Taito Muraoka