運動学習理論を踏まえた効果的な声がけとは?
はじめに…
運動学習(motor learning)とはなにか?
→実践や運動経験を通して、技術的な動作を起こす能力を比較的持続的な変化に導く、運動制御の統合プロセスのこと。
難しい言葉が並べられていますが、要するに…
【実際の運動や体の動きの中で新しい動作やスポーツ動作を獲得する】ことを指しています。そして、その獲得した動作を【継続して自動的に自分自身の体で再現できる】ように様々な手段を使ってトレーニングを行うこと が必要です。
動作を学習する過程
ー 第1段階(認知):課題となる動作がどのような動きなのか、どの場面で動作を行うのかがわかる
ー 第2段階(連合):課題となる動作を正しく行い、質を高める
ー 第3段階(自動化):課題となる動作を意識せずにでも行える
まずは、問診や実際の動作などから選手の課題を見つけ、その課題に対して【どの段階にいるのか】を評価することが非常に重要です!
フィードバックの種類
パーソナルトレーニングやグループレッスンでも、クライアントに対して適切なフィードバック(エクササイズのフォームの声がけなど)を行えることは重要です。むしろ、この部分を押さえておかなければ【適切なエクササイズが選択できているけど、実際に指導するとイマイチ結果が出ない】などトレーナー自身の悩みに繋がってしまいます。
そこで、今回は【フィードバック】について少し深掘りをしていきたいと思います!
フィードバックには大きく分けて2つの種類があります!
ー 内的フィードバック :運動の最中に学習者自身が感じる情報(張力・知覚・内部感覚など) →自分自身のみが感じることのできる【内在的】なもの
ー 外的フィードバック :運動の課題に対する結果が外部から教示される(鏡や映像・タイムなど)
→自分自身では感じることのできず、動作を行なった結果得られる【外在的】なもの
例えば…
スクワットをしてクライアント自身が「お尻を使っている感じがする」というのは【内的フィードバック】 になります!
スクワットを行う最中に鏡を見ながら「もう少しお尻を後ろに引いていきましょう」という指示は 【外的フィードバック】 になります!
また、外的フィードバックには【KR】と【KP】と呼ばれる2種類にさらに分けられます。
KR と KP
例えば、【KR】を用いたフィードバックの例を挙げると、「今の50m走のタイムは6秒00だったよ」と 【50m走を行なった結果にフォーカスしたフィードバック】になります。
一方、【KP】を用いたフィードバックの例を挙げると、「スタートの時にもっと脚を伸ばすことを意識してみて」「腕をもっと大きく振って走ろう」など【その走りにどのような 特徴があったかにフォーカスしたフィードバック】になります。
運動制約仮説
【KR】と【KP】を踏まえた上で、最後に【運動制約仮説】という理論をご紹介します!
【KP】のような動作の質に対するフィードバックを多く行いすぎると、効果的な運動の正常制御過程に意識的に加入することとなり、運動の【自動化】を阻害することになってしまいます。その結果【期待した運動効果が得られない】ということに繋がります。
逆に【KR】のような動作の目的や結果に対するフィードバックを行うことで運動の【自動化】を促進することができ、結果として【期待した運動効果を得る】ことに繋がります。
まとめ
最終的には動作を【自動化】し実際のスポーツや日常生活に落とし込んでいくことが必要となってきます。
そのために、【どのような言葉で動作に対する結果を選手に伝えるか】が非常に重要になります。
フィードバックの声がけ1つで選手やクライアントの意識の向け方を変えることも可能なので、学んでおくべき 項目かと思います!